2025年の日本建設業界の給与見通しと最新の給与動向について

建設業界の給与が2025年も6％前後上昇する背景には、深刻な人手不足や残業時間の上限規制、政府の賃上げ支援策など複数の要因が影響しています。特に大手企業では初任給の大幅引き上げが進み、福利厚生や働き方改革など待遇面の改善も加速しています。本記事では、こうした変化の背景にある社会的・政策的要因を踏まえながら、業界の最新状況と実践的な改善策について詳しく解説します。

2025年の賃金上昇トレンドと背景

2025年の建設業界の給与は、2024年の約5〜6％の賃上げ傾向を踏まえ、引き続き高めの水準となる見通しです。大手ゼネコンや建設企業では、ベースアップや定期昇給の組み合わせにより、6〜7％の賃上げを実施するケースがみられます。中には10％を超える賃上げを示す企業もありますが、それらは個別の例として認識してください。

賃金上昇の主な背景は以下の通りです：

人手不足の継続　建設業界の就業者数は1980年代のピーク時から減少し続けており、平均年齢は54歳を超え、若年層の割合が低い状況です。2025年には団塊世代の大量退職も予定されており、人材不足への対応が求められています。特に、熟練技術者の不足が顕著で、若手への技術継承が急務となっています。
残業時間の上限規制対応　2024年4月から施行された時間外労働の上限規制により、企業は残業削減に努めつつ、新規採用や賃金調整で労働条件を見直しています。これにより、残業代に依存しない給与体系への移行も加速しています。
政府の賃上げ支援や公共工事単価の引き上げ　国土交通省は2025年度の公共工事設計労務単価を6.0％引き上げており、これが公共工事に携わる労働者の賃金底上げに直結しています。この政策が波及効果をもたらし、民間企業の賃金水準にも好影響を与えています。
生活コストの変動に伴う賃金調整　2025年は特に物価上昇が続いているため、建設労働者の生活維持を目的に賃金の引き上げが必要となっています。生活費高騰に対応した賃金改定は、労働者の安定的な生活基盤確保に不可欠な要素です。

2025年の建設労働者の給与水準と職種別動向

具体的な給与変化のデータ

厚生労働省の毎月勤労統計調査（2024年11月）によると、建設業の月間現金給与総額は約40万5,000円で前年同月比約4.3％増と、全産業の平均約3.0％を上回る伸びを示しています。特に、都市部の大手企業では、この増加率がより顕著です。

また、大手建設会社における新卒大卒総合職の初任給は2025年4月入社分で約30万円前後に引き上げられ、多くの企業で前年から約13％の上昇が確認されています。これにより、若年層の業界への関心と応募が増加しつつあります。

公共工事設計労務単価の推移

国土交通省が公表した2025年度の公共工事設計労務単価は、全国全職種で平均6.0％上昇し、7年連続の上昇となっています。職種別には以下のような単価が見られます：

軽作業員：1万8,137円（前年比6.8％増）
大工：2万9,019円（6.3％増）
左官：2万9,351円（6.8％増）
鉄筋工：3万0,071円（5.9％増）
とび工：2万9,748円（4.8％増）

これらの単価引き上げは、公共工事従事者の直接的な賃上げにつながるだけでなく、業界の賃金全体の底上げ効果を持っています。加えて、これら単価の上昇は元請け企業から下請け企業へと徐々に波及しており、中小企業の労働条件改善にも貢献しています。

人手不足と賃金上昇の関係および課題

人材不足の現状と若手労働者の採用状況

建設業界では、就業者数減少と高齢化が依然として深刻な課題です。特に、現場での即戦力となる若手労働者の採用が都市部大手企業で増加していますが、地方や中小企業では依然として採用難が続いています。

技術継承や新人育成環境の縮小は深刻で、職業訓練校の統廃合なども影響し、熟練技術の伝達が滞りがちです。
有料職業紹介や派遣労働に関する規制によって、人材獲得での自由度が限定され採用の多様化が遅れています。
経営者の高齢化が進む中小企業では、事業の継続性や将来性に対する不安が若年層の入職を妨げる要因となっています。

これらの状況が賃金上昇の格差を生み、特に地方や中小企業での上昇余地を制限しています。

市場の動向と企業の対応

大手企業では人材確保に向けて、賃金だけでなく福利厚生の充実や働き方の柔軟化にも積極的に取り組んでいます。
資材価格の高騰や各種社会保険料の増加が企業のコスト圧迫となっており、これが結果的に労働者への賃金還元の調整要因とされています。
建設業界内ではM&Aや事業の再編が進み、組織再編成に伴う人員配置の最適化や給与体系の見直しが進展しています。
この結果、都市部大手企業と地方中小企業の間で賃金格差が広がる懸念もあり、地域間の労働力流動化や待遇の標準化に向けた課題解決が求められています。

給与以外の待遇改善について

賃金上昇のみならず、建設業界では福利厚生や労働環境の改善にも注力が集まっています。

食事補助や住宅手当、各種社内制度の充実によって、現場作業員の生活環境が改善され、定着率向上に寄与しています。税制面での優遇措置を活用した福利厚生も増加傾向にあります。
女性や外国人労働者の積極的な採用と定着支援のため、現場の安全対策や休憩環境の整備、多様な勤務形態の導入が進んでいます。これにより、業界のイメージ改善も図られています。
ICT技術やDXの導入により、工程管理や安全管理の効率化が実現し、労働時間削減と生産性向上が進展しています。これらに伴い、残業削減と公正な評価制度による賃金制度の見直しも加速しています。
社内研修や技術資格取得支援の充実など、従業員のキャリアアップを支える制度整備が業績向上・働き甲斐向上に寄与しています。

これらの待遇改善策は、単なる賃金の上昇以上に建設業界における長期的な人材確保と生産性向上に欠かせない要素となっています。

新設：2025年の賃上げ動向と業界団体・政府の連携による構造改革への取り組み

2025年の建設業界の賃上げは数値上の増加だけでなく、業界全体の構造改革とも深く結びついている点が重要です。国土交通省や主要建設業団体は、賃上げ促進のための連携を強化し、持続可能な賃金上昇の好循環を目指しています。

まず、2025年の公共工事設計労務単価は6.0％引き上げられ、これが7年連続で上昇することで過去最高値を更新。これに加えて、政府は公共工事の入札時に、実績ある賃上げ企業に対する加点措置を設け、大企業では3％以上、中小企業でも1.5％以上の賃上げ実施を受注拡大の条件としています。この施策により、単に賃金を引き上げるだけでなく、市場価格としての適正な労務費の確保が図られています。

さらに、多重下請け構造の見直しにも力が入れられています。長年の問題であった過剰な下請け階層の解消により、賃金原資が現場労働者に適切に還元される体制づくりを推進。国交省は2024年11月に実態調査と指導を開始し、現場の賃上げ圧力を下げる商慣習の是正を目指しています。

業界団体もこの流れに呼応し、賃上げ目標の達成状況を定期的にフォローし、下請け契約においても賃上げ水準の担保を促進。たとえば、日本建設業連合会は、2025年度での6％程度の平均賃上げを目標とし、会員企業に厳格な対応を要請しています。

こうした官民連携の動きは、単なる一時的な賃上げで終わらせず、建設業界の賃金体系の底上げと生産性向上、そして働き手の生活安定に資する構造改革を推進し、将来の人材確保を見据えたものといえます。2025年は賃上げの「量」と「質」を両立する重要な年となっており、企業経営者や人事担当者はこの動きに積極的に対応することが求められています。