2025年日本建設業の最新給与見通しと労働者給与情報

建設業の平均賃上げ率は6％超に達し、新卒初任給も大幅に上昇。人手不足や政府の賃上げ促進策が後押しする中、大手企業を中心に給与の底上げが進んでいます。ただし、物価上昇により実質所得の改善が課題となっており、さらなる賃上げや福利厚生の強化が重要です。専門資格の取得や制度活用による収入向上の可能性も広がっています。最新の給与動向を把握し、将来に備えたキャリア設計が求められます。

2025年の建設業界における給与動向の背景

2025年の賃上げ率は2024年とほぼ同水準で推移し、大手企業では5％以上、中小企業でも5〜6％の賃上げが見込まれています。この賃上げの背景には、

2024年4月から開始された残業時間上限規制の遵守による労働時間短縮と収入の確保
日本の少子高齢化に伴う建設業界の若手人材不足
政府が公共工事の入札で賃上げ実施企業を優遇する改革の推進
企業の人的資本投資や労働組合の賃上げ要求

などが挙げられています。

例えば、2024年度における大手ゼネコンの賃上げは平均6%程度となり、新卒者の初任給も引き上げられており、大学卒は28万円から30万円、修士了は30万円超となる水準に設定されています。また、残業時間規制により勤務時間の抑制が図られる中、時間当たり賃金の引き上げが進んでいるため、労働者の収入安定化にも寄与しています。これにより、長時間労働による健康リスクの軽減と合わせて、働きやすさが向上していることも給与上昇の背景の一つです。

建設労働者の給与水準と変化

厚生労働省の毎月勤労統計調査2024年11月分によると、建設業の月間現金給与総額は40万5,446円で前年比4.3％増加しており、全産業の平均上昇率3.0％を上回っています。2025年もこの傾向が続く見込みで、平均的な年収は約565万円と予測されています。

年齢別の平均年収は以下の通りです。

20代：約415万円
30代：約541万円
40代：約608万円
50代：約681万円
60代：約543万円（再雇用が多いためやや減少傾向）

職種別に見ると、施工管理職など専門スキルを要する職種では30代で540万円～750万円、40代以降では900万円以上になるケースもあります。大手ゼネコン勤務者は特に高い収入水準が維持され、40代で900万円を超える事例も報告されています。

一方、中小企業所属の建設労働者の場合はやや低い水準で、20代約442万円、30代約627万円程度ですが、専門資格や経験による給与アップの可能性があります。加えて、特定の設備工事や重機操作など専門性の高い技能を持つ労働者は需要が高まっており、これらのスキルを持つことで中小企業でも高収入を目指すことが可能です。

また、地方と都市圏では給与水準に差がありますが、多くの地方自治体や企業が若手確保のための賃金引き上げや住宅手当の強化に乗り出しているため、地域間格差の是正に向けた動きも出ています。

非正規労働者の給与改善の動向

建設業界における賃上げは正社員だけでなく、パート・アルバイトといった非正規労働者にも広がっています。日本労働組合総連合会（連合）が行った2025年春闘の調査によれば、多くの企業でパート労働者の賃上げが7%以上の増額となっていることが分かっています。これにより待遇格差の是正が進んでいます。

また、非正規労働者向けの時給も引き上げ傾向にあり、2025年の全国平均最低賃金は約1,100円を超える見込みで、2024年の5%以上の引き上げを基にしています。特に大都市圏では更なる時給増加や、夜勤手当、危険手当などの各種手当ての充実も見られ、非正規労働者の生活安定に寄与しています。

さらに、建設業界での非正規労働者の職務範囲が多様化・高度化しており、技能講習受講や専門職資格取得支援が増加しているため、キャリアアップを通じて正社員化や給与引き上げのチャンスが拡大しています。

福利厚生の充実が給与改善を支える

物価上昇が続く状況のなかで、賃金の引き上げだけでは生活実感が伴いにくいため、多くの建設企業で福利厚生の充実が進められています。特に、食事補助や住宅補助が注目されており、「チケットレストラン」をはじめとする食事補助サービスを導入する企業が増えています。

これらの福利厚生は所得税の非課税枠を活用して運用され、手取り収入の実感増加に役立っています。非正規労働者を含む従業員のモチベーション向上や定着率向上に資する効果も期待されています。

加えて、研修制度の充実や健康管理支援、育児・介護休業制度の整備など多様な福利厚生を取り入れている企業が増えており、これが若年層や女性労働者の建設業界参画を後押ししています。これらの取り組みは長期的な人材確保と労働環境の安定化に直結し、結果的に給与引き上げの土台となっています。

人手不足と労働構造改革が給与底上げに影響

建設業界では若手職人の不足が進んでおり、特に団塊世代の引退が近づく2025年は人手不足の影響が大きくなると予想されています。厚生労働省や国土交通省は多重下請け構造の解消に取り組み、直接雇用の推進や賃金の適正化を図っています。これにより、下請け企業の労働者の給与水準も徐々に向上する見込みです。

また、一級建築士、施工管理技士、技術士などの専門資格を有する人材の待遇改善も見られ、これらの専門職の平均年収は700万円前後のケースも増加しています。国の資格取得支援制度の拡充や研修機会の増加により、スキルアップを目指す人材が増え、結果として建設業全体の給与水準引き上げに貢献しています。

同時に、IT技術の導入や建設ロボットの活用など先端技術の普及も進んでおり、これらの技術活用を得意とする人材は高評価され、給与面での優遇が期待されます。企業は労働生産性の向上と人材確保を両立させるために、給与体系の見直しを進めているのです。

建設業界で給与向上を目指すためのポイント

給与やキャリアアップを目指す建設労働者にとっては、

一級建築士、施工管理技士、技術士などの専門資格取得
実務経験の蓄積とスキルの高度化
大手企業やスーパーゼネコンでの就労

が重要な要素です。特に施工管理職は専門性が高く、比較的収入水準が高い代表的な職種です。

さらに、ITやAIを活用したスマート施工技術の導入が進んでおり、これらのスキル習得も将来的な収入向上に資すると考えられます。加えて、英語や外国語のスキルを持つ人材も国際プロジェクトの増加に伴い需要が高まっており、高待遇を得るチャンスが広がっています。

また、健康管理やメンタルヘルスの知識を持ち、チームマネジメントや安全管理能力を有する人材は、リーダー層として給与面での優遇が期待できるため、総合的なスキルアップを心がけることが大切です。

新規セクション：地域別給与格差の現状と改善策

建設業界の給与水準は、都市圏と地方で依然として大きな地域格差が存在し、この課題は2025年においても重要視されています。東京や大阪、名古屋などの大都市圏では、需要の高さや高い物価水準の影響で給与額が高くなる傾向が顕著です。例えば、都市圏の施工管理職の30代平均年収が700万円を超える一方、地方では同職種で600万円前後にとどまっています。こうした差は、単に経済格差だけでなく、建設プロジェクトの規模や資本力、求人競争の激しさにも起因しています。

これに対し、多くの地方自治体や地域建設企業は、若手人材の確保を目的に賃金の引き上げや住宅手当、通勤手当の拡充を進めています。特に地方では、住宅費が比較的抑えられるものの給与水準が平行して低いことが、若者の都市部流出を招く一因となっています。そこで住宅補助や地域定住支援金の提供、さらには育児・介護支援サービスの充実など、働きやすく生活しやすい環境づくりを推進している例も目立ちます。

また、国土交通省はプレカット工場やIT施工技術の地域展開を促進し、地方の生産性向上と技術者育成を支援する政策を展開しています。技術力の底上げにより、地方企業でも高付加価値なプロジェクトを受注しやすくなり、結果として賃金水準の底上げにつながることが期待されています。

給与だけでなく、キャリアパスの多様化も地域格差解消の鍵です。地方の建設企業では、社内研修の充実や資格取得支援によってスキルアップを積極的に後押ししており、都市部と比べても遜色のないキャリア形成が可能となっています。

2025年においても、賃金引き上げや福利厚生の充実はもちろん、地域ごとの特性や暮らしやすさを総合的に考慮した求人戦略が不可欠です。将来的にはデジタル技術の活用と人材育成により、地域間の給与格差縮小がさらに進み、建設業全体の持続可能な成長が期待されています。