2025年企業セキュリティと内部不正対策
2025年現在、企業のセキュリティ対策は、クラウド化進展や複雑化するサイバー攻撃に対応するため、高度な技術と多層防御が不可欠です。日本企業では、次世代ファイアウォール(NGFW)、エンドポイント検知・対応(EDR)、AIによるトラフィック分析、自動化ツールによる内部不正監視が注目され、これらの組み合わせで内部犯行や外部攻撃への迅速かつ効率的なリスク管理を実現します。
内部不正対策ツールによるリスク軽減の取り組み
内部不正は、正当なアクセス権を持つ社内ユーザーによるリスクがあり、検知が難しいことから特別な対策が必要です。2025年の内部不正対策ツールは、AIや自動化技術を用いて、情報漏洩や不正利用の兆候を早期に検知することを目指しています。
- 1touch.ioオンプレミスおよびクラウド上の構造化・非構造化データから個人情報を検出・追跡し、情報の取り扱いに関する管理とレポーティングをサポートします。これにより、内部からの情報流出リスクの管理に役立ちます。特に大規模なデータ環境を持つ企業では、膨大なデータの中から重要情報を自動で抽出し、コンプライアンス遵守を支援します。
- Attivo Networks動的なデセプション(偽装)技術を用いて、社内ネットワーク内の潜在的な内部脅威を検知し、攻撃者を罠に誘導することで早期発見を支援します。例えば、攻撃者が社内ネットワークを探索するときにダミー資産へ誘導し、異常な動きを捕捉することで被害拡大を防ぎます。
- CyberArk特権アカウント管理(PAM)ソリューションにより、高権限アカウントのアクセス監査と管理を行い、内部関係者による不正アクセスリスクの削減に貢献します。パスワードのローテーションやアクセス権の最小限化を通じて、内部の権限濫用を防止しています。
- Cyberhaven従業員のデータ操作を監視し、異常なユーザー行動やデータ移動を検知してアラートを生成します。例えば、大量ファイルのダウンロードや非許可のデータ転送があった場合に即座に通知され、管理者が迅速に対応可能です。
これらのツールはそれぞれ特徴を持ち、複数組み合わせて運用することで、内部不正の兆候を多角的に検知する体制の構築に繋がるとされています。実際の運用では、ツールごとのアラートを統合管理するSIEMとの連携も不可欠で、総合的なリスクの早期発見と対応に役立てられています。
不正監視とインシデント対応の効率化における自動化の活用
膨大なセキュリティログやアラートに対して、人手での対応が困難な状況を踏まえ、2025年の企業セキュリティでは自動化を用いた不正監視と対応の効率化が注目されています。
- Arcanna.aiFortinetと連携したAI駆動の意思決定プラットフォームで、インシデント検知から対応までの自動化を支援し、迅速な対応を促進します。例えば、検知した異常トラフィックの原因を特定し、切り分けや初動対処策を自動提案する機能などが特徴です。
- D3 SecuritySOAR(Security Orchestration, Automation and Response)プラットフォームを提供し、複雑なセキュリティオペレーションの自動化を可能にし、対応時間短縮を目指しています。インシデント対応フローの自動実行や複数ツール間の連携調整によって、セキュリティ運用チームの負荷軽減に寄与します。
- Fortinet連携ツール群CyberhavenやCyberArkなどの複数ツールと連携することで、自動検知アラートからの迅速な対応の実現が期待されています。2025年の最新連携では、AI分析を用いた優先順位付けや影響範囲の自動特定など、より高度な自動運用が可能になっています。
自動化は人的ミスの削減やログの中から重要な異常の抽出、即時の処理体制の構築に役立つと考えられており、これによりインシデント対応のリードタイムが数段階短縮されるなどの効果が報告されています。加えて、自動化基盤の継続的なチューニングも重要であり、誤検知を減らすためのフィードバックループ構築が推奨されます。
次世代ファイアウォール(NGFW)とクラウド連携による防御の強化
次世代ファイアウォール(NGFW)は、パケット検査に加え、アプリケーション識別や高度な脅威防御機能を備え、2025年の企業ネットワーク防御において重要な役割を担っています。
- FortiGateシリーズ(Fortinet)は、AI連携や自動スケール機能を持ち、多様化する環境に対応できる設計です。中小企業から大規模企業まで幅広い規模に対応し、クラウド環境とのシームレスな連携も強化されています。AIを活用した脅威検知は、ポリシー違反や未知の侵入者検出に高い効果を示しています。
- Arqitの量子暗号化技術と統合することで、量子コンピュータ耐性のある暗号通信を目指しています。2025年には試験的導入が一部企業で進んでおり、今後の量子技術の脅威に備えた先進的な防御策として注目されています。
- Alkira Cloud Services Exchange のCNaaS(Cloud Network as a Service)により、ハイブリッド・マルチクラウド環境で一貫したセキュリティポリシーを自動的に適用できる仕組みを提供します。これにより、拠点やクラウド間での接続性とセキュリティを両立し、運用管理の負荷も大幅に削減可能です。
- Corsa Red ArmorはSSL/TLSトラフィックの可視化を支援し、暗号化された通信の中でも攻撃の兆候を検知しやすくしています。暗号化通信の増加に伴い、従来見えにくかった通信内容の解析が可能となり、未知の攻撃手法への対応にも役立っています。
これらの技術により、企業の複数拠点やクラウド環境に対して柔軟で高度なセキュリティ防御の実現が図られており、運用面では中央管理機能やダッシュボードによる可視化も充実しています。
エンドポイント保護(EDR)の導入と運用のポイント
エンドポイントは依然として攻撃の対象となりやすいため、EDR(Endpoint Detection and Response)は重要視されています。最新のEDR技術は、ウイルス検出だけでなく、脅威の行動分析や一部自動対応機能を含んでいます。
- CrowdStrikeはクラウドネイティブなセキュリティプラットフォームとして多層防御を提供し、Fortinetとの連携によりインシデント対応を支援します。リアルタイムでの行動分析と脅威検知により、非常に迅速な復旧が可能です。
- Bitdefenderは企業の規模を問わず利用でき、自動検知とブロック機能を備え、ランサムウェアやAPT攻撃への対策を支援します。2025年版では機械学習による異常検知精度が向上し、誤検知を減らしつつ高精度の防御を実現しています。
- ForeScoutはIoTを含む多様なデバイスをエージェントレスで可視化し、ネットワークに接続された瞬間から管理と保護を行います。特に製造業や医療機関などで多様な非管理デバイスの管理に効果的とされています。
EDRの導入は、攻撃の初期段階での検知と対応に有効とされ、他のセキュリティ技術と連携しての運用が推奨されています。加えて、EDRから得られる脅威情報はSOC(セキュリティオペレーションセンター)での分析に利用され、継続的な対策改善に活用されるケースも増えています。
AIを活用したネットワークトラフィック分析と不正検知の活用例
AI技術導入によるネットワークトラフィックの解析は、未知の脅威や高度な持続的攻撃(APT)を識別し、対応策を支援するものとして注目されています。
- DarktraceのImmune System技術は、ネットワークにおける異常行動をリアルタイムで検知し、IoTやクラウドを含む多様な環境の保護に役立てられています。2025年モデルでは、AIが自己学習を繰り返すことで、これまで把握できなかった微細な異常も検知可能となっています。
- Criminal IPはAIとオープンソースの情報を活用した脅威インテリジェンスを提供し、Fortinet SOARとの連携を通じ脅威分析と対応の強化を目指しています。外部の攻撃者インフラストラクチャの変化を素早く察知し、ネットワーク防御に反映させることが可能です。
- CyGlassはAIによる詳細なネットワークデータ分析で、従来のセキュリティで見逃しやすい攻撃を検知し、対策を支援しています。特に、複数のデータソースを統合分析することで、攻撃者の多段階攻撃パターンを明らかにし、早期対応に繋げています。
これらのAIによる分析は大量のトラフィック情報から異常や脅威に関連する情報を抽出し、セキュリティ運用の向上と効率化に貢献しています。今後もAIの精度向上や説明可能なAI(XAI)技術との連携により、運用現場での信頼性向上が期待されています。
2025年における攻撃ベクトルの多様化と多層防御の重要性
2025年のサイバー攻撃は、従来のマルウェアやフィッシングに加え、内部不正やソーシャルエンジニアリングをはじめとする多様な攻撃ベクトルが巧妙化しています。攻撃ベクトルとは、攻撃者がシステム脆弱性を悪用してネットワークやデバイスへ不正侵入するための経路や手法を指し、例えば以下のようなものが挙げられます。
- フィッシング攻撃:標的ユーザーに偽メールや偽サイトを通じパスワード等の認証情報を騙し取る手法。多層防御の一環として、従業員教育やメールフィルタリング技術、MFA(多要素認証)の導入が必須となっています。
- マルウェア感染:ランサムウェアやスパイウェアなどの悪意あるソフトウェアが端末内に侵入し、情報窃取や業務停止を引き起こします。NGFWやEDRによる検知・対応に加え、定期的なソフトウェアパッチ適用と最新アンチウイルス活用で防御力を強化します。
- 内部脅威:正規アクセス権を持つ従業員や元社員による不正アクセスや情報漏洩。先述の内部不正対策ツールやアクセス監査、行動分析を組み合わせて発見を促進します。
- ゼロデイ攻撃:未発見の脆弱性を突いた攻撃。これにはパッチ適用の迅速さや次世代防御技術の導入が有効です。
- DDoS攻撃:大量のトラフィックでサービス停止を狙う攻撃。NGFWやトラフィック整流技術、クラウドベースの分散防御が求められます。
このように攻撃ベクトルは複数層にわたるため、単一の防御策ではなく、複数技術の連携・相乗効果が重要視されています。特に2025年は、AI、自動化、クラウド連携技術を活用した多層防御体制やユーザー教育を組み合わせることが、被害最小化および早期対応に不可欠です。企業は自社の攻撃対象領域を継続的に見直し、最新の攻撃手法を踏まえた対策を段階的に導入することが成功の鍵となります。
まとめ
2025年の企業セキュリティ対策においては、次のような複合的な取り組みが重要となっています。
- 内部不正対策ツールによるアクセス管理と行動監視
- AIと自動化技術を活用した不正検知と対応の高度化
- クラウド対応が可能な次世代ファイアウォール(NGFW)による防御強化
- EDR技術によるエンドポイントの多層防御
- AIを用いたネットワークトラフィック解析と脅威インテリジェンスの活用
- 攻撃ベクトルの多様化を踏まえた多層的な防御戦略の策定と、従業員教育・多要素認証・パッチ管理の徹底
これらの技術を統合した運用体制の構築は、企業における内部不正やサイバー攻撃のリスク管理に資するものです。加えて、従業員教育、多要素認証(MFA)、定期的なパッチ管理の併用により、多層的かつ持続的なセキュリティ体制の強化が求められています。2025年の最新動向を踏まえて、実効性の高い包括的なセキュリティ戦略の構築を今すぐ開始することが重要です。
Sources
- https://speakerdeck.com/oracle4engineer/ocwc_20240626_security
- https://www.fortinet.com/jp/resources/cyberglossary/attack-vector
- https://www.fortinet.com/jp/partners/partnerships/alliance-partners
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