2025年日本企業向け最新サイバーセキュリティ技術と内部不正対策ツールの全貌

2025年の企業セキュリティ対策は、外部攻撃の防御にとどまらず、内部不正リスクの管理、オートメーションによる監視強化、AIを活用したトラフィック分析、さらに次世代ファイアウォール(NGFW)やエンドポイント保護(EDR)による多層防御体制の構築が重視されている。2025年に日本企業が直面するサイバー脅威を踏まえ、最新技術と内部不正対策ソリューションが重要な要素となっている。

2025年日本企業向け最新サイバーセキュリティ技術と内部不正対策ツールの全貌

2025年のサイバー脅威動向と企業が直面する課題

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威2025(組織編)」によると、企業における主な脅威は

  • ランサムウェア攻撃(5年連続1位)
  • サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
  • 内部不正による情報漏えい

が上位に挙げられています。

特に内部不正は2024年の大手損保4社での顧客情報漏えい事件のように、件数は多くなくとも1件あたりの被害規模が大きいケースがあるため、外部攻撃対策とともに内部からのリスク低減が重要です。近年は従業員のみならず、外部委託先やパートナー企業からの不正も増加傾向にあり、情報の流通経路全体を可視化・監視することが求められています。

また、政治的・軍事的対立を背景にした「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」も注目されており、日本企業にとって高度なAPT攻撃対策や持続的なセキュリティ強化が求められています。これに対応するため、企業は脅威インテリジェンスの収集・分析を強化し、攻撃の兆候を早期に察知する能力を組織的に高める必要があります。

内部不正対策のポイント:暗号化と権限管理を軸にしたDRM/IRMソリューションの紹介

内部不正リスクへの対応として、IPAの報告でも指摘されている「データ自体の保護(暗号化、細かなアクセス制御)」は重要です。これらの対策に利用されるソリューションの一例として、純国産のDRM/IRMソリューション「DataClasys」があります。

DataClasysの主な特徴

  • 情報の暗号化:ファイル単位での暗号化を行い、仮に情報が漏えいしても第三者による閲覧を抑制。特に営業秘密や設計情報など機密性の高いファイルにも対応しています。
  • 細かなアクセス権限管理:復号、閲覧、印刷、コピー&ペーストなどの操作権限を詳細に制御し、内部従業員や委託先による不正利用を抑える。権限変更もリアルタイムで反映され、即時性を確保。
  • オフライン環境対応:オンプレミスでの利用も可能で、ネットワークが制限された環境でも機密情報を保護。工場や研究所など閉域環境でも運用可能です。
  • 産業特化の対応:3DCADや大容量動画ファイルの暗号化に対応し、製造業や金融業など多様な業種で利用されています。例えば製造業では設計図の無断持ち出し防止に有効です。

DataClasysは多層防御体制の一例として、内部不正やサプライチェーン経由の情報漏えいリスクの抑制に活用されています。また、操作ログの取得により不正行為の証跡を明確に残せることも大きな強みです。なお、導入規模や効果は企業の運用状況によって異なるため、社内の情報資産の重要度や業務フローを踏まえたカスタマイズが推奨されます。

AIの活用とオートメーションでの不正監視と迅速対応

NTTデータをはじめとする企業では、ゼロトラストセキュリティを基盤に、AIを用いたオートメーション監視・対応体制を構築しています。

NTTデータのサービス概要(一例)

  • 24時間365日の統合監視:IDS/IPSやUTM、WAFなど複数のセキュリティ機能を統合し、不正アクセスや攻撃をリアルタイムで検知。これにより人手では見逃しやすい細かな異常も察知可能です。
  • AIによるトラフィック分析:生成AI技術を活用し、既知・未知のマルウェアやランサムウェアの挙動解析を支援。例えば通信の特徴や振る舞いをリアルタイムで分析し、未知の脅威を予兆検知します。
  • オートメーションレスポンス:検知から遮断・対策までのプロセスを半自動化し、対応速度の向上と人的負荷の軽減を目指す。自動化により普段は見落としがちな小規模異常も速やかに処理可能です。
  • ゼロトラスト導入支援:多要素認証や生体認証、極小権限アクセスの活用で、組織内部・外部双方からのリスクを管理。権限の見直しや継続的なアクセス監査もサポートしています。

これらのサービスは、NTTデータのサイバーセキュリティオペレーションセンター(SOC)が収集する多様な脅威情報を基に提供されています。2025年ではAIの解析精度が向上しており、攻撃者の手法も巧妙化するなか、人的対応だけでなくAIによる支援が不可欠となっています。なお、サービス内容や効果は個別の導入環境や運用体制に依存するため、運用体制の整備も重要です。

次世代ファイアウォール(NGFW)が果たす役割

安全な組織通信を維持するため、従来のファイアウォールに加え、

  • アプリケーション識別機能
  • IDS/IPSによる侵入検知防御
  • URLフィルタリングおよびマルウェア検出

機能を統合したNGFWが広く用いられています。これにより、多様化・複雑化する攻撃に対応しやすくなり、内部での不正な動きの発見にも貢献しています。

例えば、従業員が業務外で不適切なウェブサイトにアクセスしたり、未知のマルウェアが通信を試みる際にも、NGFWが通信内容を精査し遮断可能です。また、多地点に設置してネットワークの境界を厳格に管理できるため、リモートワークの普及で多様化するアクセス経路のセキュリティ強化にも効果を発揮しています。なお、NGFWのログと既存のSIEM(セキュリティ情報イベント管理)システムとの連携が重要視されており、全社的な脅威監視体制の一環として活用されています。

エンドポイント保護(EDR)による早期脅威検知と内部不正抑制の仕組み

PCやモバイル端末が攻撃の経路となるケースが増える中、EDR(Endpoint Detection and Response)の導入が推奨されています。

  • 様々な認証方法と振る舞い分析により、不正アクセスや権限濫用を検出。例えば不審なファイル操作やプロセス挙動をリアルタイムで監視。
  • 端末レベルでの攻撃兆候を自動分析し、インシデントへの迅速対応を支援。感染の初期段階での封じ込めが可能です。
  • 管理コンソール機能により複数端末の状態を一元的に監視可能。組織全体のリスク状況をリアルタイムで把握できます。

これらにより、企業内の端末を守り、内部不正の早期発見・対処に役立てられています。特に、リモートワーク環境下で社外から社内システムへアクセスする際の安全性向上に貢献しており、多要素認証やディスク暗号化と組み合わせることで防御効果を高めています。導入にあたっては、組織の運用ルールや環境に合わせて綿密なポリシー設計と従業員教育が必要です。

セキュリティ意識向上と人材育成の重要性

技術の導入だけでなく、運用担当者や従業員のスキル・意識向上もセキュリティ強化に不可欠です。NTTデータが提供する「CybersecAcademy®」などの研修プログラムは、

  • セキュリティ理論と実践を組み合わせた講義・演習
  • 経営層から現場技術者まで幅広い対象
  • 最新の脅威や対策技術の情報提供

などを通じて、企業全体の防御力向上をサポートしています。また、ハンズオン形式の訓練や定期的な模擬攻撃演習(レッドチーム演習)を組み込むことで、実際の攻撃を想定した対応力を養成。これにより、技術的対策だけでは発見が困難な内部不正兆候や人為的ミスの早期察知を促進します。

セキュリティ教育プログラムの効果は受講者の参加状況や企業文化にも依存するため、継続的な評価と改善が重要です。教育成果を社内KPIに組み込み、経営層も巻き込んだ意識改革の推進が成功の鍵となります。

【新章】2025年注目の「能動的サイバー防御」と国家レベルの連携強化の動向

2025年のサイバーセキュリティ対策で注目すべき新たな潮流に「能動的サイバー防御(Active Cyber Defense)」があります。これは、警察庁や内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が強化を推進している政策で、国や企業が連携し、攻撃の兆候を早期に察知して能動的に被害拡大を抑止する取り組みです。

具体的には、通常の防御対策に加えて、

  • 攻撃元のサーバーに侵入し、無害化措置を講じる
  • 標的型メール攻撃やAPT攻撃の発信源を特定し、情報の拡散を未然に防ぐ
  • 攻撃に関連するインフラの通信遮断や侵入阻止のための法的・技術的支援を連携して実施

といった活動が含まれます。特に2025年1月に公表された「MirrorFace」グループによる日本国内の重要施設や研究機関を狙った標的型サイバー攻撃事件は、国家レベルでの対応の重要性を改めて浮き彫りにしました。

企業においてもこの枠組みの中で、国家機関との情報連携や脅威インテリジェンスの共有を積極的に行うことが推奨されています。これにより、先手を打つ形での防御強化が可能となり、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃などの高度化する脅威に対しても迅速な対応ができるようになります。

実務的には、政府が提供する脅威情報や攻撃傾向レポートを定期的にチェックし、自社のSOC(セキュリティオペレーションセンター)やセキュリティベンダーと連携を密にすることが必要です。また、国家機関が行う能動的対策を補完する形で、自社の内部監査やアクセス監視、暗号化政策など防御策を強化することが効果的です。

このような国家と企業が一体となった「能動的サイバー防御」は、2025年以降の日本のサイバーセキュリティの新常識となる見込みです。企業は単独での対策から一歩踏み出し、公共機関との協力関係構築や最新の国家方針を踏まえた戦略的な防御体制構築を急ぐ必要があります。

2025年に向けた企業のサイバーセキュリティ対策には、

  • 侵入前提の多層防御体制(NGFW、EDR、ゼロトラストなど)
  • 内部不正抑制のための情報保護ソリューション(DRM/IRMを含む)
  • AI・オートメーション活用による迅速な不正監視・対応
  • セキュリティ教育による人的要素の強化
  • そして、国家レベルと連携した能動的サイバー防御の推進

の5つが重要とされています。これらを効果的に連携させることで、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃、内部不正リスクを包括的に管理し、技術面だけでなく運用や企業文化を含めた総合的なセキュリティ戦略の構築が求められています。

2025年の日本企業は、最新技術の導入および継続的なリスク監視・制御体制の整備を進めると同時に、組織内外の人材育成や国家機関との連携にも注力し、安全な事業継続を目指すことがますます重要となっています。

Sources

免責事項:このウェブサイトに含まれるすべてのコンテンツ(テキスト、グラフィックス、画像、情報)は、一般的な情報提供を目的としています。このページに含まれる情報および資料、ならびにそこに記載された条項、条件、説明は、予告なしに変更されることがあります。